茶の本(岡倉天心著)

私はこの本を読んで、岡倉天心という人が好きになった。

とても人間くさい、のである。

東京美術学校校長の地位を怪文書によって追われ、

その怪文書に書かれた、九鬼男爵夫人”波津”との恋愛の最中に、異母姪”八杉貞”との間に一子をもうけていたりするのだが、実はこの二人の女性、ともに、不幸な生涯を送ることになる。波津は天心との中を割かれて精神病院に送られ、貞は自殺未遂の末、40代半ばで死んでいるのだという。

おそらくそういったことがあって、こういうことを考える境地にまでいたったと考えるのが適当だと思う。

一般にこの本は、茶を道にまで高めたその精神、茶人としての振る舞い、

美を大切にする姿勢を示し、道教的な、無私、自然との融合を説いた書といわれるのではないかと思うが、

「『虚』は一切を含有する故に万能である。虚においてのみ運動が可能になる。おのれを空しくして他人を自由に立ち入らせることのできる者は、どんな事態をも自由にすることができるであろう」

唯識論ではわからなかった、おのれを空しくすることの意味が、天心のおかげで、少しばかりわかったような気がする。

 

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