高千穂〜神話のふるさとを訪ねて(前半)〜古に自然と調和した人間の姿をみる

自然の中でいきるということ、高千穂はそのことを思い起こしてくれる場所だ。
神話の時代の生活がいまでも息づいている。

早朝の飛行機で羽田から熊本空港までいき、
すぐに高速バス高千穂号にとびのる。
山々を抜けて神話のふるさと、高千穂に到着したのは午後1時手前だった。

ノープランできたので、一通りの行動計画を立てようと、バスセンターのすぐ近くにあったまちなか案内所に駆け込む。すると、気さくなおじさんが、とても親切に相談にのってくれた。

「いまきみ、ここな、それでレンタカーがここ。半日しか今日はないから、レンタカー屋さんの近くの岩戸を中心にまわるとよきに。天岩戸神社に、天安河原。ここが天照大神が隠れてしまって、困った八百万の神が相談したところや、パワースポットになってるから、いってみたらいいと思うよ 」

私はアドバイスを受け、天岩戸神社方面に車を走らせることにした。

車を駐車場にとめると、すでに空気が違う。
遠くで流れる清流の心地よい音が耳に響く。
その舞い上がった湿気が肌にふれ、吸い込む息は、
都会の雑踏で汚れた身体をきれいにしてくれるような気がする。

鳥居をくぐってしばらく進むと、社務所があり、宮司さんが説明をするから少し
人が集まるのを待ってくれという。

4,5分待つと、私も含めて3グループ、5名ほどの集団になった。
宮司さんに連れられて、お祓いを済ませ、御神体のある聖域に歩みを進める。

写真がとれないのでおみせできないのだが、天岩戸神社の西本宮は、そのアマテラスオオミカミが実際に隠れた、対岸にある岩戸を御神体として祀ってある。そこで、宮司さんがこう説明した。

「菅原道真公が太宰府で神様となり、徳川家康公がその後日光東照宮で神様となったように、
アマテラスオオミカミも昔は人間だったのです。」

「おや、神々のふるさとなんていうからさぞ神話神話した話かとおもったら…」
と思い、どこか神々が身近な存在に感じられた。

天岩戸神社の西本宮の先には、天安河原がある。その入口を下っていくと先ほど音が聞こえていた清流まで近づくことができる。その色が違う。

よくあるエメラルドグリーンではなく、薄い灰色と青が混ざったような色なのだ。
これが一層、神聖な趣を際立たせる。

その川沿いを少し上流に登っていくと、大きな洞窟のような空間が広がり、小石が幾重にも積み重なった小さな塔が乱立している。その先にひっそりとおさまっている社は、ひんやりとなにかを訴えかけるような気で満ちていた。

あとで話をきくと、20年くらい前までは、天安河原の前を流れる川は、
子どもたちが潜って遊ぶくらい、いまよりも断然に深い流れだったとのことだった。

それを聞いて私はとても寂しくなった。
なぜ流れが浅くなってしまったのか、そう尋ねると、
「それは山師さんが悪い。最近は、木を切ったままにしてしまうから。」
との答えだった。

山師はただの木こりではなく、4、50年かけて育つ木々を、次の世代のために育て、
山全体のメンテナンスをする仕事だ。

居酒屋でお会いした山師さんは、30歳ほどだったが、自分以外はみな60歳以上だといっていた。実際、彼の唇には、チェーンソーの歯による傷あとが生々しく残っており、とても危険な仕事であることを物語っていたので、彼から年に数名は死んでいるという話を聞く前にも、簡単な仕事でないことはわかった。

その一方で、20年前より、あの聖域である天安河原の川の深さが浅くなってしまったという事実を知ると、林業というビジネスの側面がありながら、自然の姿を守ることを第一優先とすることの難しさを考えさせられるのだった。

西本宮の対岸、ほど近いところにある東本宮は、天照大御神が岩戸からでて住んだところと伝わる。岩戸から出るきっかけをつくった踊りを踊ったのがアメノウズメで、彼女も神様とされている。

彼女はいったいどんな踊りで天照大神を岩戸から出すことに成功したのか?
説明書きにはこうある。
「アメノウズメが乳房も陰もさらけだしながら、踊り狂ったので、八百万の神は笑い、わきたち」と。

なんでも、「世界で最初にストリップをした神様」(ゲストハウスのご主人談)とのことだ。

高千穂神社で毎晩披露されている神楽のダイジェスト版にしても、その舞の中に、イザナキとイザナミが酒を飲ませあい、酔いつぶれて横になったイザナキの上にイザナミが乗っかり、腰をふるところまででてくる。

神楽は五穀豊穣を願い、家族総出で準備するものだから、これをコドモも見るわけだ。場合によっては振り付けを踊るかもしれない。

私は、こんなにもあけっぴろげで人間らしい神々をもつ、祖国が愛おしくなり、
この気取らなさが残り続ければいいと、強く思った。

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