高千穂〜神話のふるさとを訪ねて(後半)〜 雲の中を歩き、樹々のように生きようと思う

南九州は、5月末だというのに、なんと、土曜日から梅雨入りをしていたのだという。
そのことにようやく気がついた私は、連続して雨が並ぶ週間予報を目にして、
一日繰り上げて、祖母山に登ることにきめた。
降水確率がまだましだったからだ。

8時30分に開くまちなか案内所を訪れ、
おっちゃんに、北谷登山口までの道程を教えてもらう。

山道を30分ほど進むと
突如として舗装が途絶えた。

えっと思ったが、進むよりほかあるまい。

轍のずれでガッタガタッと左右にゆれる車が、
崖スレスレの道を進む。
まるでちょっとしたジェットコースターにのっているかのよう。

北谷登山口に着き、登山届をポストにいれて、
誰もいない山道を歩き出す。

風穴コースは急勾配で、もうひとつのコースは比較的緩やかだという。
違う景色を楽しみたいので、上りを風穴コースとした。
雨が降って滑るようになっては、急勾配のコースをいくのは難しいだろうと
考えたからだ。

登りだすと私を迎えてくれたのは、
土であり、岩であり、沢であり、樹々であった。
樹々の根本にひろがる緑の苔のような植物の存在が優しい。
クッションなのか、衣なのか、山道を柔らかくする。

それにしても、樹々の貴さよ。

樹々は、木挽に切られたその幹の、枝の先から芽を出し、やり直す。
岩があるとみれば、ゆるりとかわし、根を伸ばす。
そうと思えば、岩をも穿つ強さを見せる。
だが、その場にいる以上のことは決してしない。

あいにくの雨模様だったが、
頂上の景色は、一面真っ白で、ヤマツツジの鮮やかなピンクと新緑とが
混ざりあって、艶やかですらあった。

頂上を超え、緩やかな尾根づたいの道を進むと、
雲の白と樹々の緑がぼんやりと混じり合う幻想的な風景が広がる。

思わず悲しげなメロディーの口笛を口ずさむ。

唇をかわかせながら私は、
今回の登山でもまた、ガラス瓶1本とヨーグルトのパックの蓋を拾って、
降りてきたのである。

Follow me!